きみは僕としあわせなあくびをしますか？【７】

きみは僕としあわせなあくびをしますか？【７】



　目がさめて。

　隣にある、体温に気づく。

「・・・セ、セイロンっ！」

「やっと起きか」

　さらりと言ってのけるセイロンは、もうすっかり衣を身にまとっていた。

　そのうえで、裸のフェアを、その腕に抱いていたのだ。

「・・・私・・・」

　言いかけて、はっとする。

　体に残る鈍痛が、ついさっきまでしていた行為を、はっきりと思い出させてくれたのだ。

「・・・・・・う・・・っ」

「これで我が不能ではないことがわかったかね？　・・・まったく、初めてなら初めてと、最初からそう言えば・・・」

「うっ・・・！　だって仕方ないじゃないっ！今まで誰ともしたいと思ったことなかったんだもん」

「・・・・・・」

「な、なにっ」

「やはり・・・初物だったのだな」

「！！」

　セイロンが自分をひっかけたことに気づいて、口をふさぐが、もう遅い。

「ふふっ・・・恥ずかしがることもあるまい。男としては嬉しいものだよ。」

「～～～！！」

　逃げる術も見当たらず、シーツをかぶってセイロンの意地悪な視線をやりすごそうとする。

「・・・・・・セイロンなんて・・・嫌いっ」

「我はそなたが好きだがね。」

「・・・！！」

どんなに怒りの言葉を投げつけても。

飾り気のない揺るぎのない気持ちで迎え撃つ男の言葉に、胸をかき乱されるのは・・・彼女自身、言葉と真逆の思いを彼に寄せている証。

「セイロン・・・」

「なんとなくそんな気がしていたのだ・・・そなた、いつも口づけだけで腰を抜かしておっただろう？」

「・・・。」

「だから・・・そなたが慣れるまで手を出さぬでおこうと決めておったのだよ。それが、そなたを不安にさせてしまっていたとはな・・・悪いことをした」

痛む四肢を宥めるようにシーツの越しに触れてくる掌はこんなにもあたたかい。

静かに思いを吐露する彼の言葉には、嘘がつけいる隙もないほど誠意がこもっていた。

疑ってしまった自分に罪悪感を覚えるほどに。

「セイ・・・」

胸にこみ上げるものに突き動かされ、『ごめんね』と素直に謝罪しようとフェアは口を開いた。

・・・が。



「まぁ初物を頂いた手前・・・一応手は抜かせてもらったぞ・・・店主殿。ただし、慣れれば容赦せんがな」

「・・・・・・はい？」

　今、手を抜いた、とか、容赦、とか、とんでもない言葉を、耳にしたような気が・・・。

　シーツから、そっと顔をのぞかせて、恐る恐るセイロンの瞳を見上げる。

　それは、今フェアが聞いた言葉が嘘ではないことを、如実に物語っていた。

「・・・安心せよ。店主殿・・・次回は痛みなど感じさせん」

「誰が次回を許したのっ！？」

　思わず突っ込みとともに勇猛果敢にとびかかろう・・・とした腰が、まったく動かないことに、目を見開いてしまうフェア。

「・・・え？　・・・ええっ？！」

「やっぱり腰が抜けたか・・・まぁそうであろうな・・・終いには、自ら腰を使っておったし・・・初物にしては上出来であったぞ」

「冷静にそういうことを言わないッ！」

　ああ・・・もう最低。

　穴があったらはいりたいくらいだ。

　もう一度シーツをかぶってセイロンの視線から逃げる。

「・・・フェア」

「ッ！」

　そのシーツごと、体を抱きしめられる。

　耳に注がれる、好きな男の声。

　思わず、うっとりと目を閉じてしまう。

　心地よい、低い声。

　名前を呼ばれるだけで、その想いがつたわってきそうなほどだ。

　しかし、直後の台詞は、フェアの背中を凍らせるのに充分なものだった。

「安心せよ・・・そのうち、そなたの方から泣いて強請ってくるようになる」

「誰が強請るかぁぁ！！放してー！！」

「好きだよ・・・フェア」

「莫迦っ・・・私だって大好きだよ！！だから離してっ」

「却下！！」

　耳まで赤くしながら、動かない体でそれでも殴りかかろうとするフェアが愛しくて。

　セイロンは、無駄な抵抗をくりかえす愛妻の体を、思いきり抱きしめるのだった。

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・・・はい。

リシェル嬢に知れたら、「莫迦っプル行為禁止！！」なんて怒鳴られそうな夫婦ロンフェアのお話はこれにて、御終いです。

多分、空が書いたロンフェアＳＳの中で一番「我慢」しとりました。この若さま。

（たったの3か月・・・だけどね）

きっと、この後の反動は凄いでしょう・・・３Ｒどころじゃ納得しないかもしれません。

「その後」書くべきでしょうか？先生・・・（笑）

というのはあくまで冗談で。

どっちにしろ、フェアさんにとっては、悪夢的新婚性活（どのくらい悪夢かっていうと・・・それがあまりにも度を越して、身の危険を感じたフェアさんが・・・シャオメイ様のところに逃げ込んでどっかの異世界に逃げ込んじゃうくらいです。「思われるのは嬉しいのが正直な話だけど・・・体がついていけない！！」みたいな）の始まりになりますね。

（眠れる獅子もとい絶倫若を目覚めさせるきっかけをつくっちゃったから・・・諦めてください）



こんなお話ですが、最後まで読んでくださってどうもありがとうございました！！