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【あなたの物にはなれない】



始めは見てるだけで良い。

その内見てるだけじゃ満足出来なくて、話してみたくなる。

話していたら触れたくなる。

触れたら手に入れたくなる。

手に入れたら独占したくなる。



「はぁ・・・」



盛大な溜息をついてしまい、横にいたフェアが心配そうに此方を覗き込んだ。



「大丈夫?」

「ん、む・・・少し酔ったようだ」

「あらら、珍しい・・・ひょっとして、気分も悪い?」

「すまん・・・少し風に当たって来るよ」



親族だけで開いた小さな宴の席。

己の隣で誰彼構わず極上の笑顔を振り撒くフェアに、それこそ気分を悪くしていた。



「ふぅ…」



今夜になって数え切れない程ついた溜息。



「セイロン」



柔らかな声に呼ばれて振り返る。



「具合どう?」

「ああ。・・・大分良くなったな」



そなたが我を心配してわざわざ抜けて来てくれたから。



「・・・余り他の者に笑いかけないでくれ」

「え?」

「その・・・心配と言うか・・・不安と言うか・・・」

「もしかして、嫉妬?」



フェアは悪戯っぽく笑った。



「そなたには…我だけの物でいて欲しいのだ…」

「やだよ」

「!?」

「私は、物じゃないもの。・・・自由にものを考えて、自分で決めることができるニンゲンだもの」

「フェア・・・すまん。」

「でもね、心を預けることはできるわ。私の意思で・・・」

「・・・っ」

「・・・これは我儘なのかもしれないけれど、譲れない私の願いだよ。どうか・・・自由でいさせて・・・何度だって、恋をさせて?・・・あなたに」



・・・嗚呼・・・すまない。

そうだ・・・幸せすぎて、忘れていたよ。

何者にも縛られない果てしなく広がる空のような君の自由さに憧れ、恋に気づいたことを。

そうやって・・・昔と少しも違わずにいつでも、我の予想を超えた嬉しい言葉をくれる君への愛しさに臨界点はない。

際限無く、愛してやまない・・・愛しい人。

照れたように笑い、腕に擦り寄って来た彼女を強く抱き締める。



「愛してる」



愛の言葉の後に深く口付けた。

それは誰にも見えない・・・我だけの所有印。





あとがきっぽいもの

突発的に夫婦なロンフェアを書いたのは、今までスカパー!で高橋留美子劇場♯4【鉢の中】を見ていて・・・「こ、怖いぃぃぃ!!嫁姑問題ィィ・・・夫婦って難しい」という思いでいっぱいになったから。出来はどうあれ「ちょっとでも幸せ気分に浸れるSSSを書かないと、夢見が悪くなりそう」と思って書きました。

高橋留美子さんとくれば「うる星やつら」とか「らんま1/2」などが有名ですが、空的に一番好きなのは「人魚シリーズ(「喰らえば不老不死の体を得る。だが・・・その肉が体にあわねば、即死もしくは化け物になり果てる」と伝承される人魚の肉を食い、生き延びてしまった人たちの悲哀の物語です)」なんです。つまりは、・・・・暗くてグロくて少し狂気をはらんでいて・・・でも人間臭い話が好きなんです。
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