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【新婚さんいらっしゃい(2)】(フルメタル・パニック!ねつ造未来新婚話)



性懲りもなくつづきます




【新婚さんいらっしゃい(2)】(フルメタル・パニック!ねつ造未来新婚話)



「なぁ千鳥・・・今日は祝いの日だったか?」

宗介は仕事から帰ってきて、食卓を見るなり小首をかしげながら、かなめに訊ねた。

食卓には、鰻のかばやきやら鯛の刺身、そして、天麩羅・・・料亭で見かけるような食事がそこにはあったからだ。


「んー?・・・そーよ。お祝いだから、奮発しちゃった。」


答えるかなめの声が、いささか普段より高いような感じがするのは気のせいか・・・?


「早く着替えて、一緒に食べよ?冷めないうちにねっ」

いつにないくらい、上機嫌な笑顔を向けて、かなめはネクタイを外す夫を促した。



「宗介・・・ご飯美味しい?」

「無論、肯定だ。千鳥・・・君が作ってくれるもので不味いと感じたものは一切ないぞ?」

「そっか・・・ならよかった。」

宗介は、いつになくはしゃいでいる妻を見ながら考えていた。

今日は何の祝いだろう?去年、誕生日を忘れたら、激怒して一週間くらい口をきいてもらえなかったが・・・今日は誕生日ではないし・・・。

脂ののった鰻に舌鼓を打ちながら宗介は、かなめが怒り出す前に今日は何を祝う日なのかを考えまくっていた。


「・・・」

「食事を終えたら、ちゃんと話すよ・・・。だから、今は、愉しく食べよ?こんなに高いもの、しばらく食べられないから。」

「そうか・・・。」

宗介が何を考え込んでいるかを素早く見抜いたかなめは、そう言って笑った。

その妻の笑顔に安堵し、宗介は天麩羅に箸をつけた。




程なく二人は食事を終え、宗介がくつろいでいる間に、かなめは食事の後片付けも終え、テーブルにお茶を持ってくる。

そうして、ソファに腰をかけると、じっと宗介の顔を覗き込んだ。


「ね・・・ソースケ。話があるの。真面目な話だから、ちゃんと座って聞いて・・・ね?」


かなめのその言葉を耳にした宗介の頭に、またいつもの『戯言』が浮んだ。

しかし、その声の調子がいつもと様子が違う感じがしたし、先ほどの『祝い』のことも気になる。

言われたとおりに、居住いを正し、かなめの方を見た。


「どうした?千鳥・・・」

「今日ね・・・病院へ行って、診てもらってきたの。」

「何!?」

かなめが切り出した言葉に、湯飲みを取ろうと手を伸ばした宗介の手がぴたりと止まる。


「最近、体調が良くなかったから。それで、先生に診てもらってきたの。そしたら・・・・・・・」

「何故だ!?どうして俺に一言も言ってくれなかったんだ!?」

かなめの言葉を遮り、突然宗介が怒鳴った。


「ソースケ・・・」

「流行り病?コレラか・・・ペストか?・・・赤痢菌か!?」

「あ・・・あのソースケ・・・?」

「体調が悪いなんて、俺は聞いてないし、そんな風に見えなかったぞ!何故、言わないんだ。どうして、君はいつも我慢をするんだ!・・・君にもしもの事があったら、俺は・・・」


自分で言った『もしも』を想像したのだろう。

宗介は蒼白な顔で、不安そうな瞳をかなめに向けた。

そして、愛しそうにそっと、かなめの頬を撫でた。


逆にかなめは胸一杯の気持ちだった。

宗介の愛情を再確認――そんな必要もないが――できた気持ちだ。


幸せすぎて・・・ついつい忘れがちになってしまうけれど・・・。

そうだ・・・。

――こんな風に自分を心配してくれる人は、この人しかいない。

いつだってソースケは・・・こうやって誰よりも自分の身を案じ、護っていてくれたのだ。


かなめはそう確信した。


そうして、安心させるように宗介に微笑む。


「ごめんね、ソースケ。でも、たいしたことじゃないの。ソースケ、すぐに心配するし・・・・・・・」

「当たり前だ!だいたい、君は――」

宗介は、ぐいっとかなめの手首を引っ張り、自分の懐へ抱き込んだ。

出逢ったころと変わりない黒い艶やかな髪にいとおしそうに口づける。


「俺に心配をかけすぎなんだ。もっと大人しくしていてくれ・・・・・・・」

かなめの耳元でそう囁く。


そして――いつものように抱こうとしたが、かなめが抵抗したため、その手を止める。


「ちょっとちょっと!!ソースケ!心配してくれるのはとっても嬉しいんですけどっあたしの話を最後まで聞きなさいって!」

「どうせいつもの『戯言』だろ?」

「違うの!お医者さんが言ったことだってば!」

赤面しながら、やけくそ気味に叫んだかなめの言葉に、ぴたりと宗介の動きが止まり、自分の胸の中の彼女を見つめる。


「重い・・・病なのか?」

「違うよ。それなら、お祝いなんかしてられないじゃない。」

正反対の宗介の言葉に、かなめは苦笑した。


「なら・・・・・・・」

「赤ちゃん。」

「・・・・は・・・・・?」

「赤ちゃんができたんだって!!ソースケとあたしのっ。」


しばらくの間、宗介は不思議な顔をしてかなめの顔を眺めていた。

そして、ぽかんとした表情のまま無言でかなめを抱いていた片方の手を、彼女のお腹に当てる。

かなめはそっと、その大きなの手の上に自分の手を重ねた。


「あたしとソースケの赤ちゃんがこのお腹の中にいるんだって。お医者さんが言うんだから嘘じゃないよ?ここのところ調子が悪かったのも『つわり』のせいだったみたい。」


静かな口調で語られたかなめの言葉に、宗介の頬に朱がさす。


「でかしたぞ!千鳥!」

「ば・・・莫迦!!声大きすぎっ!!」

スパァァァン!!


軍隊の号令なみに気合いの入った歓喜の声がリビングに響き渡り、数秒遅れで照れ隠しの怒号とキレのいいハリセンの音が鳴り響いた。






もうちょっとだけ続く予定でございます。
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