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非幻(ロンフェアSS「再会」補足版)





以下は、かなり前に書いた捏造未来ロンフェアSS「再会」の補足的SSSでございます。(短いです)

非幻(ロンフェアSS「再会」補足版)







抱き締める腕の強さを、そのぬくもりを今も覚えている。



見掛けより逞しい胸のあつさも、ぴとりと耳を付ければ聞こえた微かな鼓動も、それが今此処に在るかのように、はっきりと思い出せる。



それ程に何度も、互いを求め合った、与え合った、奪い合った。



あれは遠い昔。



時間ではなく感覚が、酷く・・・・・・遠い。



いずれ失ってしまうと判っていた。



その日が何時なのか、さえ・・・必死に隠そうとする彼のしぐさで。



あの人を忘れる事はない。



例え彼・・・セイロンが、自分を忘れる事はあっても。



だって彼の存在は、自分にとって今も想い出にすらなっていないから。



一緒にすごした日々は、あの不器用な男を愛した自分の心は、偽ることのできない事実だから・・・。



最後に抱き締めてくれた腕の強さを、今も覚えている。



見掛けより逞しい胸の温かさも、耳を付ければ聞こえた微かな鼓動も、それが今此処に在るかのように、はっきりと思い出せる。



ほら・・・ね。



目を瞑れば。



今も鮮明な記憶が、あの声さえ復元させる。









「店主殿・・・」



・・・これは、夢?



「フェア・・・」



ためらいがちに自分の名前を呼んでくれるこの声は・・・幻聴・・・?



苦しいくらいに強くあたたかい、この抱擁は幻?



「今しがた・・・帰った・・・」



「セイ・・・ロン・・・?」



懐かしい体温が、背中から布越しに伝わってくる。



「もう・・・逃がさぬ。」



涙に霞む視界に入ってくるのは風にそよぐ長い髪。



あの日と変わらぬその紅蓮が・・・初めて聞く彼の束縛の言葉が、この状況は幻覚ではないと、明確に伝えていた。



「ただいま・・・。」
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